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『週刊ダイヤモンド』4/13号(4/8売)の特集は『実は強いぞ!日本の農業』



株式会社ダイヤモンド社より毎週月曜日に発売されている、経済・金融・企業情報をタイムリーに伝えるビジネス誌、『週刊ダイヤモンド』。
4月8日に発売される4/13号の特集は『実は強いぞ!日本の農業』。
特集の読みどころは下記のとおり。その他、ビジネス、経済に関する最新の記事も満載です!



──「実は強いぞ!日本の農業」特集の読みどころ───

■「農業は成長産業」と見つけたり
■TPP参加は飛躍のチャンスとみる
■精神に富んだ農業生産者、続々


 東京都心から高速道路で2時間の山梨県北杜市。さらに30分ほど山道を走ると増富集落にたどり着く。秩父多摩甲斐国立公園内にあり、棚田と段々畑がのどかな田園風景をつくっている。ここに日本の農村が抱える問題の典型がある。
 増富は人口の62%が65歳以上という限界集落。農業の担い手不足で多くの農地が耕作放棄され、ススキや樹木が伸びた田畑がここかしこに存在する。耕作放棄率はなんと60%を超える。ここにほぼ毎週末、東京から30~40人の集団が大型バスでやって来て、耕作放棄地の開墾や、コメや野菜、高冷地の条件を生かした青大豆、花豆などの有機無農薬栽培を行う。
三菱地所、博報堂、講談社、目黒区教育委員会などの社員や職員が、農作業を楽しむのだ。
 運営主体はNPO法人「えがおつなげて」。地主農家から農地を借り受け、契約企業に対してニーズに応じたサービスを提供する。主に農業指導や
イベントの運営補助、通常時の田畑の管理を手伝う。
博報堂は、社内のコミュニケーション不足を改善する目的で、「棚田プロジェクト」を2011年冬にスタートさせた。開墾から田植え、稲刈りまで7回のプログラムに1年で約150人が参加する。
「自然以外は何もないところで、汗水垂らして共同作業を行うと、役職や年齢に関係なく同期のような不思議な一体感ができる」と人事局の中村武司氏は満足げに言う。

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■都会人を労働力にして
■耕作放棄地を開墾
 
えがおつなげての代表、曽根原久司氏は長野県の農村の生まれ。東京で経営コンサルタントの職に就いたが、1995年に北杜市に移住した。
業務を通してバブル崩壊の広がりを目の当たりにし、日本経済が凋落すると直感。将来深刻化すると思われた食料やエネルギーの問題を、田舎に住んで、そこにある地域資源を活用して解決する事業を起こしたいと考えた。
 移住地の条件を、大消費地である都心から2時間程度のアクセスで、地域資源が豊富であることと設定した。北杜市は、日照時間が日本一、水資源が豊富、八ヶ岳や南アルプスの景観に優れるなど条件がそろっていた。そして最も重要な地域資源として重視したのが、耕作放棄地だった。
 地域の外から来た新参者が農地を借りるのは容易でないが、耕作放棄地なら比較的ハードルが低い。山梨県の耕作放棄率は日本第2位。北杜市は県内1位で、耕作放棄地が800ヘクタールもある。
「この使われていない広大な資源を活用する仕組みをまずは北杜市につくり、その後全国の農村に展開したい」と曽根原氏は考えた。
最初に自ら耕作放棄地を借りて開墾し、有機無農薬でコメや野菜を自給する生活を始めた。農産物直売所を設け、夏季にはオーガニックレストランを開いた。山から薪を切り出す権利を買い、八ヶ岳の別荘地に薪を販売し、地元の鉄工所と薪ストーブを開発したら大ヒット。
まさに「6次産業化」(1次産業の農業、2次産業の製造業、3次産業の商業を融合して収益を上げるモデルを6次産業化と称し、近年、国が推進している)を、その言葉がなかったときに展開した。

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■多面的機能を活用して
■農業を10兆円産業に
 
開墾農地が2ヘクタールに広がった01年、えがおつなげてを設立。都市と農村の交流活動を始めた。
それが順調になると、隣町の須玉町役場(当時)から、町が消滅の危機にある増富地区を再生してほしいと依頼が来た。勝算があったわけではないが、試しに東京で耕作放棄地の「開墾ボランティア」を募ってみると、続々と集まり、3年間で3ヘクタールの農地を開墾できた(現在は5・6ヘクタール)。
自然に囲まれた田舎での農作業は、都会人にとって格好のストレス解消法になると想像していた曽根原氏だったが、「耕作放棄地の開墾もまたサービスとして価値になり、都会人と放棄地のマッチングは農村再生のビジネスモデルになる」と確信した。
次のステップは、このモデルの拡大だ。そのためには、企業を巻き込むことだと経営コンサルタントの経験から発想し、05年より企業ファーム(畑)を募集する。企業の農業参入の道案内だ。
第1号は、地元の和菓子会社「清月」。自社商品用に、北杜市伝来の青大豆と花豆を生産している。
大企業でこの企業ファームに最初に参画したのは、三菱地所だ。08年よりCSR活動の一環として、「空と土プロジェクト」をスタートさせた。グループ社員や、本社のある丸の内界隈の社員、三菱地所レジデンスクラブの会員などに向けた複数のプログラムを行い、12年までの4年間で38回のツアーを実施している。
10年からは酒米の栽培を始め、収穫後に山梨県の酒造会社「萬屋醸造店」に依頼して純米酒「丸の内」を製造。有機無農薬の酒米で造った酒は評判で、12年は4700本を製造して、ほぼ完売。酒米作りに参加した社員は「この酒のコメは私が作ったんです」などと営業にも活用しているという。
さらには、森林資源の活用をテーマに、放置された間伐材を運び出す活動から派生して、山梨県産カラマツの間伐材や小径木を原料に集成材を開発。
三菱地所ホームが、ツーバイフォー住宅の部材に標準採用している。
現在、曽根原氏は、増富で培ったノウハウを全国に移転する活動を始めている。スタートは東北地方で、3県5団体で同時に進行している。
一つは、宮城県でIT企業の農業生産法人をつくり、障害者雇用を行うプロジェクト。もう一つは、福島県会津坂下町の風評被害を払拭するための6次産業化と販売を手助けするプロジェクトだ。
農業に関連する、多くの経験を通して、曽根原氏が現在到達した考えは、次の通りだ。
「日本の農業の未来は、三つのあり方があると思う。一つ目は、規模の経済が発揮できる大規模農業。二つ目が、6次産業化や体験サービスなどを販売する付加価値型農業。三つ目が、半農半Xのようなライフスタイル農業。この三つのカテゴリーをそれぞれ伸ばせば、日本の農業は再生し、トータルで10兆円産業になり得る。日本の田舎には、放棄された農業の資源という宝の山がある」
曽根原氏が耕作放棄地を資源とみたのに対して、海外に成長のチャンスを見いだしているのが、愛知県の生産者だ。

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■タイの大水田で
■コシヒカリ栽培計画
 
全国有数の農業地帯である愛知県田原市に本社を置く農業生産法人、新鮮組の岡本重明社長は、農業の国際化を90年代から強く意識してきた。
背景には、「コストを考えた農業をしなければ日本の農家はいずれ生き残れなくなる」という読みと強い危機感があったからだ。
純正部品に比べて価格が2分の1程度のトラクターの替え用の爪を中国の企業に依頼して生産・輸入して販売しているほか、椿油の搾りかすから取れる肥料や天然の土壌改良剤である安いヤシガラなどをアジア諸国から輸入・販売している。
新鮮組は従業員9人、年商1億3000万円の会社だが、年商の3割近くを資材販売が占める。4年前には米国製法特許の「水性二酸化塩素」という耐菌性を生まない消毒用資材の販売も始めた。米国や欧州をはじめ世界では広く食品添加物として認められているが、日本では厚生労働省が、カット野菜など一部に認めているだけで、農業用としては普及していない。

「地元の菊栽培の農家は農薬が効かないウイルス系や細菌の病気に悩んでいた。試験散布で使った農家が欲しいと言ってきたので、作物に与える水を
殺菌する資材として販売を始めた」(岡本氏)

いずれも農協が取り扱わない資材ばかりだ。こうした活動を行う新鮮組は、地元農協「JA愛知みなみ」にとっては目の上のたんこぶで、農協と摩擦を起こし続けてきた。メロンや花き栽培など高付加価値農業が盛んな渥美半島を管轄に持つ同農協は売上高が全国1位だ。その日本最大の農協に1人で戦いを挑んだ農家として岡本氏は著名になった。
岡本氏はこれまでイチゴ栽培に始まり、露地野菜などにも取り組んできた。簡易水耕栽培の特許も持つ。現在の新鮮組の主力は水田耕作請負(オペレーター)で、約80ヘクタールを請け負う。稲作の「後工程」で必要になる自前の巨大な乾燥設備も有する。岡本氏の口からは「減価償却対応」「融資の際に必要になるビジネスプランをどう作成するか」といった企業経営者と全く変わらないキーワードが出てくる。
そして岡本氏が現在、虎視眈々と事業強化を狙うのが、稲作ビジネスの国際化だ。11年からタイのビール大手「シンハー」と機械商社「PWH」が連携して新規事業として始めたタイでのコシヒカリ作りのプロジェクトリーダーを引き受けた。
タイ北部のチェンライを中心に延べ8000ヘクタールの水田で3毛作を行い、15年までにコシヒカリを栽培する計画で動いている。1ライ(タイの
単位で約16アール)当たり300~400キログラムしか収穫できなかったのを、岡本氏は技術指導で収穫量を約4倍に引き上げた。
「バルブを設置して水と肥料の管理を徹底し、雨期でも作業がしやすい乾燥設備開発も指導した。これによって収穫量と食味のよさを両立させた。日本の高い技術を使って海外で市場を開拓する時代が来ている」と岡本氏は言う。

岡本氏の究極の狙いは日本で生産したコメを海外に輸出することにある。しかし、「現状では全農系の会社経由でしか輸出できない『利権』があるため、海外で日本米を生産すればその『利権』にじゃまされずに済む」(岡本氏)。

肝心の食味について岡本氏は「タイ産の日本米は、車に例えるなら『マークX』で、日本産は『ベンツ』といった感じだ」と言うが、試作段階では一定の品質を維持できており、日本米を普及させていく自信はあるという。
岡本氏以外にも、海外で大規模に農業を展開しようとする動きは最近活発化している。東北のオペレーターの「西部開発農産」もベトナムでコメを生産しようと計画し、現在その調査を進めている。コメ作りにおける日本の生産者の技能を活用して、海外で大規模に展開すれば、相当に生産性の高い農業が実現すると予測されるのだ。
究極の目的である日本産のコシヒカリの輸出について岡本氏は、「冷凍技術を使い農家が中心となってコメをおにぎりなどに加工して出荷すれば付加価値が高まる。日本では1俵生産して農家に入ってくるお金は1万3000円程度だが、1俵からコンビニのおにぎりは1440個も作れる。1個100円で売っても1俵から14万円を超える売り上げが計算できるわけで、加工や流通のコストを引いても農家の手元には1万3000円よりも多く残る」とみている。
おにぎりに限らず、地元の食材とコメを使った弁当を冷凍して海外に輸出すれば、地元の経済にも貢献することになる。「私はこれを『ふるさと弁当
構想』と呼んでいるが、ふるさと弁当をグローバル市場に売り出す時代が来ている」と岡本氏は持論を展開する。
確かに冷凍技術は急速に発達しており、冷凍した「お節料理」が自然解凍でおいしく食べられる。冷凍お節を南米に輸送したケースもあるほか、「銀シャリ本舗」(本社・岐阜県恵那市)は冷凍お節で業績を向上させている。
「TPPで農業の大規模化やコスト管理の重要さが指摘されているが、これだけをやって生き残れるほど農業は甘いものではない。原材料の生産を規模で競っても海外には勝てない。農産物にいかに付加価値を付けられるかがポイントだ」と岡本氏は話す。


(『週刊ダイヤモンド』副編集長 大坪 亮)

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●『週刊ダイヤモンド』4/13号(雑誌コード:20242-4/13)
●定価 690円(税込)
●2013年4月8日発売


【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社ダイヤモンド社営業局営業部(担当:岩佐、大曽根)
TEL:03-5778-7241 FAX:03-5778-6619 
E-mail: osone@diamond.co.jp

関連URL:http://www.diamond.co.jp/magazine/20242041313.html

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