学校法人近畿大学


放射性物質の除去速度を30倍高速化する新技術を開発 近畿大学工学部教授井原辰彦ら研究チーム



工学部化学生命工学科 教授井原辰彦

工学部化学生命工学科 教授井原辰彦

近畿大学工学部(広島県東広島市)化学生命工学科教授の井原辰彦らの研究チームは、東洋アルミニウム株式会社(大阪府大阪市)製の多孔質※1アルミニウムの内部に放射性セシウムなどの放射性物質を吸蔵※2することで、短時間かつ極めて高い回収率、さらに長期安定保存が可能な状態で除染する技術を確立しました。この技術について特許出願を行いました。

【本件のポイント】
● 通常より穴を微細化した東洋アルミニウム製の多孔質アルミニウムを使用することで、セシウムの吸着面積を大幅に増加し、従来の30倍となる極めて優れた吸蔵速度を実現
● 吸蔵されたセシウムは外に漏れ出さないため、長期安定保存が可能
● 安価で簡素な装置を使用した低コストな除染技術で、原発事故後の汚染水対策に貢献

【研究の概要】
井原ら研究チームは、多数の細孔(小さな穴)を持つ多孔質アルミニウムを電極として用いて、その細孔内にセシウム水溶液内のセシウムイオンを電気吸蔵する研究を行いました。その結果、電極に電圧を加えるとセシウムイオンが速やかに電気吸蔵されその吸蔵速度は電極に加わる電圧とその電極面積に比例して増大すること、さらに多孔質アルミニウムに一度吸蔵されたセシウムは外に漏れ出さないことを発見しました。

平成27年(2015年)3月、これらを活用した装置によって、短時間かつ極めて高い回収率、さらに放射性物質の漏洩の可能性がない長期安定保存が可能な状態で除染する技術の確立に成功したことを発表しました。

今回、電極の素材として、通常より細孔を微細化した東洋アルミニウム製の多孔質アルミニウムを用いることでセシウム吸着面積を大幅に増やし、従来の30倍となる極めて優れた吸蔵速度の実現に成功しました。この技術について、特許出願を行いました。

今回の研究は、近畿大学が東日本大震災の復興支援として取り組んでいる「“オール近大”川俣町復興支援プロジェクト」の一環として行われ、日本学術振興会の科学研究費助成事業として採択されています。

【研究の詳細】
多孔質アルミニウム電極のセシウム吸蔵能力(吸蔵速度および吸蔵量)を調べるため、セシウム濃度4ppm(放射性Cs-137として換算すると12.86GBq/Lに相当)に調整した塩化セシウム水溶液50mLを模擬汚染水として、電気吸蔵実験を行いました。グラフ中、記号(▲)は構成組織を微細化した電極(以下、新電極)1枚を用いた結果を表したものです。比較例として、(■)は構成組織を微細化していない電極(以下、旧電極)1枚を用いた結果、(●)は旧電極2枚を用いた結果を表しています。いずれの電極も、縦4cm×横1.5cmの同一サイズを使用し、セシウムの濃度測定はカリボール法※3を採用しました。

いずれの結果も、電極に電圧(DC100V一定)を加えると、時間の経過とともにセシウム濃度は減少し、限りなくゼロに近づきますが、カリボール法による検出限界に達するまでの時間は、旧電極1枚では90分、2枚では60分程度かかるのに対して、新電極では3分程度で十分であることがわかります。これは、電極1枚について単純に時間を比較をした場合、新電極は旧電極の30倍の吸蔵速度を発揮したことになります。

添付のグラフ画像を参照してください。

【今後の展望】
近畿大学が東日本大震災の復興支援として取り組んでいる「“オール近大”川俣町復興支援プロジェクト」において、川俣町を中心とした被災地での除染作業に活用することを目指します。本技術では、簡素な装置で、汚染水に含まれる放射性金属イオンを僅かな電流で急速に電気吸蔵できるため、これを応用した除染作業の省エネルギー化が期待されます。また、除染後に放射性物質を吸蔵した電極を粉砕して容器内に充填し、加熱・加圧することで堅固化した状態で保管できるため、中間貯蔵の必要がありません。

東京電力福島第一原子力発電所では、現在、汚染水処理のための放射性物質の除去装置が稼動しています。しかし、現在の処理能力では、広大な保管場所を確保して汚染水貯蔵タンクを増設する必要があるため、除染技術自体の抜本的な見直しが急務となっています。本研究は、そういった大規模汚染水対策に有効な除染技術として期待されます。

【用語説明】
※1:多孔質
   規則正しく配列した原子の集合にできる隙間(細孔)を多数持つ物質のこと。
※2:吸蔵
   分子やイオンなどの微小物質を吸い込み、固体内部に取り込む現象。
※3:カリボール法(別名:テトラフェニルほう酸ナトリウム比濁法)
   水中のカリウムイオンの分析に使用される水質検査法で、セシウムイオンの検出にも適用できる。

【関連リンク】
近畿大学工学部化学生命工学科 教授 井原辰彦
http://www.kindai.ac.jp/meikan/257-ihara-tatsuhiko.html

“オール近大”川俣町復興支援プロジェクト
http://www.kindai.ac.jp/rd/social-activity/earthquake-east-japan/all-kindai.html

関連URL:http://www.hiro.kindai.ac.jp/

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