学校法人近畿大学


世界初!アルマ望遠鏡で暗黒矮小銀河の光をとらえる 謎に包まれた暗黒矮小銀河の正体解明への第一歩



図1 重力レンズ効果による光路の曲がり。単一の光源が手前の銀河により4つのレンズ像A1,A2,B,Cに分裂して見える。

図1 重力レンズ効果による光路の曲がり。単一の光源が手前の銀河により4つのレンズ像A1,A2,B,Cに分裂して見える。

近畿大学理工学部(大阪府東大阪市)理学科准教授の井上開輝、東京大学大学院理学系研究科(東京都文京区)助教の峰崎岳夫らの研究グループは、チリ共和国に設置された世界最高の性能を誇る巨大電波干渉計「アルマ望遠鏡」による観測で、暗黒矮小銀河(大変小さく暗い銀河)の冷たい塵が放つ微弱な光と考えられるシグナルを世界で初めて検出しました。この発見は、謎に包まれた暗黒矮小銀河の正体を解明する手がかりになると期待されています。本件に関する論文が、平成29年(2017年)1月30日に米国の学術雑誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されました。

【本件のポイント】
●世界で初めて、暗黒矮小銀河の塵が放射する微弱な電波らしきシグナルを検出
●国際プロジェクトによる世界最大の電波干渉計「アルマ望遠鏡」で観測
●宇宙の謎の一つである「行方不明の矮小銀河問題」解明への第一歩

【本件の概要】
宇宙は未だに謎に満ちていますが、研究が進むなかで理論と観測が合わない問題がいくつか生じています。その一つが「行方不明の矮小銀河問題」です。矮小銀河とは、私たちの住む天の川銀河の約1000分の1以下の質量しかない小さな銀河のことですが、観測されている矮小銀河の数が理論予測より著しく少ないのです。その理由として推測されるのは、宇宙にはほとんど光って見えない暗黒矮小銀河がたくさん潜んでいるのではないかということです。暗黒矮小銀河とは、名前の通り大変暗い天体でその正体は謎に包まれています。その謎を解明するには、暗黒矮小銀河の放つ微弱な光を直接とらえるか、重力により近くを通る光の経路を曲げる「重力レンズ効果」を使って質量を測定するか、どちらかしかありません。
近畿大学の井上と東京大学大学院の峰崎らの研究グループは、地球から114億光年離れた天体をアルマ望遠鏡で観測しました。その結果、観測対象の天体のすぐそばに、冷たい塵(小さな岩や氷の粒)によるものと考えられる微弱な電波を検出しました。その場所に暗黒矮小銀河があると仮定すると、天体の観測結果に現れたいくつかの現象が説明できることが分かりました。
今後追観測を行うことで、暗黒矮小銀河の大きさや距離などを精密に測定し、その正体に迫りたいと考えています。

【掲載誌】
■雑誌名:『The Astrophysical Journal Letters』
     宇宙物理学に関する米国の国際的学術雑誌(インパクトファクター5.487, 2015)
■論文名:Evidence for a Dusty Dark Dwarf Galaxy in the Quadruple Lens MG 0414+053
     (4重像レンズMG0414+0534にみられる塵に富む暗黒矮小銀河の証拠)
■著 者:Kaiki Taro Inoue, Satoki Matsushita, Takeo Minezaki and Masashi Chiba

【研究の詳細】
近畿大学の井上と東京大学大学院の峰崎らの研究グループは、アルマ望遠鏡で重力レンズ天体「MG0414+0534」を観測しました。「MG0414+0534」は、単一の光源が手前の銀河の「重力レンズ効果」によって4つのレンズ像として見えている比較的まれな天体です(図1)。4つのレンズ像には理論予測と異なる明るさの違いがあり、大きな質量をもつ銀河による重力レンズ効果だけでは明るさの比を説明できないため、暗黒矮小銀河も小さなレンズとして働いているだろうと考えられてきました。
観測の結果、1つのレンズ像(A2)のすぐそばで、冷たい塵(小さな岩や氷の粒)によるものと考えられる微弱な電波(波長約0.9ミリ)を検出しました(図2)。その方向に(地球から約60〜80億光年先)暗黒矮小銀河があると仮定すると、レンズ像の明るさの比を説明できることが分かりました。さらに、可視光で観測されている、塵によるレンズ像の減光も同時に説明できることが分かりました。
これらのことから、微弱な電波の起源は暗黒矮小銀河であると考えることがもっとも妥当である、という結論に達しました。

【今後の展望】
本研究により、謎に満ちた暗黒矮小銀河の微弱な光を電波(サブミリ波)で観測するという新しい手法が有効であることが分かりました。研究グループは、今後より高い解像度で観測を行い、重力レンズ像のわずかな歪みから、暗黒矮小銀河までの距離や質量分布などを測定し、その正体の解明に向けた研究をさらに進めていきます。

【用語解説】
・アルマ望遠鏡……東アジア・北米・ヨーロッパ・チリの諸国による国際プロジェクトによって、チリ共和国北部アタカマ砂漠の標高約5000メートルの高原に設置された干渉計方式の巨大電波望遠鏡。

・暗黒矮小銀河……太陽質量のおよそ10億倍以下の質量をもつ極めて暗い小さな銀河。

・重力レンズ天体……手前の天体の重力により、遠方の単一光源が複数の像としてみえている天体。

・レンズ像……重力レンズ天体の像を指す。

【関連リンク】
理工学部理学科物理学コース 准教授 井上 開輝(イノウエ カイキ)
http://www.kindai.ac.jp/meikan/272-inoue-kaiki.html
宇宙論研究室(井上研究室)
http://www.cosmology.jp/whats-new/272

関連URL:http://www.kindai.ac.jp/sci/


  • 図1 重力レンズ効果による光路の曲がり。単一の光源が手前の銀河により4つのレンズ像A1,A2,B,Cに分裂して見える。 図1 重力レンズ効果による光路の曲がり。単一の光源が手前の銀河により4つのレンズ像A1,A2,B,Cに分裂して見える。
  • 図2 アルマ望遠鏡によるMG0414+0534のサブミリ波画像。赤い円内が暗黒矮小銀河(Y)由来と考えられる光。 図2 アルマ望遠鏡によるMG0414+0534のサブミリ波画像。赤い円内が暗黒矮小銀河(Y)由来と考えられる光。
  • 図3 レンズ天体の質量密度のモデル予測。Gが一番大きい銀河、Xが二番目に大きい銀河、Yが今回発見された暗黒矮小銀河の中心を表す。 図3 レンズ天体の質量密度のモデル予測。Gが一番大きい銀河、Xが二番目に大きい銀河、Yが今回発見された暗黒矮小銀河の中心を表す。
  • 図4 暗黒矮小銀河の質量密度のモデル予測。図3でGとXの寄与を引いたものをプロットしている。暗黒矮小銀河はつぶれた楕円の形をしている。 図4 暗黒矮小銀河の質量密度のモデル予測。図3でGとXの寄与を引いたものをプロットしている。暗黒矮小銀河はつぶれた楕円の形をしている。


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