学校法人近畿大学


海上風乱流観測への数値シミュレーションの適用 海洋観測分野において先駆的な研究



左:実際の平塚沖総合実験タワーの写真、右:タワー周りの流れの数値シミュレーション結果(風速15m/s)

左:実際の平塚沖総合実験タワーの写真、右:タワー周りの流れの数値シミュレーション結果(風速15m/s)

近畿大学理工学部(大阪府東大阪市)機械工学科の准教授 鈴木直弥と准教授 道岡武信、東京大学の早稲田卓爾教授らのグループは、海上の観測塔の測定機器設置場所を検討する数値シミュレーションについて調査し、その適用の可能性を見出しました。
本件に関する論文が、平成29年(2017年)7月7日(金)、海洋理工学会が発刊する学術誌”Journal of Advanced Marine Science and Technology Society”に掲載されます。

【本件のポイント】
●海洋観測分野への数値シミュレーションの適用の可能性を見出す
●人工衛星観測における海上風速観測、波浪予報、気候の予測の精度向上につなげる
●地球温暖化の予測や台風などの災害対策が可能

【本件の概要】
近年、建築・工学の分野でCFD※1 による数値シミュレーションが普及してきており、物体周りの風の流れを検討する有効な手法の一つになってきました。しかし、海洋観測の分野では、海上の観測塔が風速に及ぼす影響を数値シミュレーションなどにより検討された例はありません。
本研究では、常時観測をしている神奈川県平塚沖約1kmに位置する東京大学所有の平塚沖総合実験タワー(海面から屋上までの高さ約20m)を対象に、簡易な数値シミュレーションを行い、観測塔周りの風の流れを再現しました。完全な海上風の再現はできていませんが、実際に風速計で計測されている風速値が観測塔の影響を受けていることが示されました。また、数値シミュレーション結果と現場データのデータ値が近い傾向を示したことで、適用の可能性が示されました。
※1 CFD(Computational Fluid Dynamics)…数値流体力学。流体の動きに関する方程式をコンピュータで解いて流れを観察する手法。

【掲載論文】
■雑誌名:“Journal of Advanced Marine Science and Technology Society”Vol.23, No.1
■発刊元:海洋理工学会
■論文名:『Effect of Observation Tower on Wind Flow over the Ocean
      -First Assessment of the Applicability of Numerical Simulation Using CFD-』
■著 者:鈴木 直弥(近畿大学)、道岡 武信(近畿大学)、早稲田 卓爾(東京大学)など

【研究の背景】
近年、地球温暖化による海水面の上昇、砂漠化、異常気象などが深刻化しており、特に巨大化した台風・ハリケーンや爆弾低気圧などの異常気象による被害が急増しています。これらの対策を講じるためには、地球温暖化による気候変動の予測を正確に行うことが重要であり、そのためには、気候システムの変動・変化の最も基本的な要素の1つである大気・海洋間での乱流輸送(運動量・熱・物質)を正確に評価することが重要です。
一般的に大気・海洋間運動量・熱・物質フラックス※2 は経験的な式で求められています。この式には係数が使用されていますが、便宜的に風速のみの関数で与えられているだけであるため、風速に対する係数の値は大きくばらつき、未だ確立されたモデルはありません。
モデルの構築には高精度な観測が重要ですが、海上風観測は、観測装置の設置場所の制限(観測場所自身が及ぼす周りの風への影響)などにより高精度で多様な状況のデータを得ることは困難です。現在、観測には観測塔やブイ、船舶が用いられ、風速計は場所の影響を受けないと考えられる位置に設置されますが、影響の有無を確認しての観測はほとんど行われていません。
※2 フラックス…単位時間単位面積あたりに流れる量のこと

【今後の展望】
まだ適用の可能性の有無を調査した段階であり、海上風を完全に再現できていないため、今後は、実際の海上風に近づけて、さらに乱流のパラメータについても検証していきます。また検証方法として現場観測データとの比較だけでなく風洞実験も行っていきます。今後、実際の流れを再現することが出来れば、適切な位置への観測機器の設置により、多様な状況でのデータが蓄積され、大気・海洋間乱流輸送が解明へ繋がります。
それにより、地球温暖化予測、台風やハリケーンの発達など気候の予測の精度向上、波浪予報の精度向上、人工衛星観測における海上風速観測の精度向上につながり、正確な情報に基づいた災害の対策につながります。

【研究者プロフィール】
近畿大学 理工学部機械工学科 准教授 鈴木直弥(すずきなおや)
専   門:環境流体工学、海洋物理学、環境リモートセンシング
研究テーマ:大気-海洋間乱流熱・運動量・物質輸送に関する研究、
      ブイおよび船舶における大気-海洋間乱流フラックス計測手法の構築、
      人工衛星を用いた海上風速計測の精度向上に関する研究
受 賞 歴:土木学会海岸工学論文集第57巻論文賞(2010)

近畿大学 理工学部機械工学科 准教授 道岡武信(みちおかたけのぶ)
専   門:流体工学、海洋物理学、乱流、物質・熱拡散
研究テーマ:化学反応を伴う乱流場に関する研究
      大気拡散に関する研究、混相乱流に関する研究
受 賞 歴:日本機械学会奨励賞(2005)、大気環境学会論文賞(2010)、
      日本原子力学会保健物理・環境科学部門論文賞(2010)、粉体工学学会技術賞(2012)

東京大学大学院 新領域創成科学研究科 早稲田卓爾(わせだたくじ)教授
専   門:船舶海洋工学
研究テーマ:風波、自由表面重力波、フリークウェーブ、黒潮流路の予測と中規模擾乱、
      データ同化、データセンター・データ収集・品質管理・データサーバー、
      波浪海流シミュレーションの工学的応用

【関連リンク】
理工学部機械工学科 准教授 鈴木 直弥(スズキ ナオヤ)
http://www.kindai.ac.jp/meikan/940-suzuki-naoya.html

理工学部機械工学科 准教授 道岡 武信(ミチオカ タケノブ)
http://www.kindai.ac.jp/meikan/1372-michioka-takenobu.html

関連URL:http://www.kindai.ac.jp/sci/


  • 左:実際の平塚沖総合実験タワーの写真、右:タワー周りの流れの数値シミュレーション結果(風速15m/s) 左:実際の平塚沖総合実験タワーの写真、右:タワー周りの流れの数値シミュレーション結果(風速15m/s)


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