学校法人近畿大学


世界初! 膵臓の慢性疾患の発症メカニズムを解明 膵臓疾患治療や膵臓癌予防への応用に期待



形質細胞様樹状細胞と膵臓腺房細胞が産生するI型IFNとIL-33と膵炎の関係

形質細胞様樹状細胞と膵臓腺房細胞が産生するI型IFNとIL-33と膵炎の関係

近畿大学医学部(大阪府大阪狭山市)内科学教室(消化器内科部門)准教授の渡邉智裕らの研究グループは、膵臓の慢性疾患である「自己免疫性膵炎」と「慢性膵炎」という2つの異なる病気に共通する免疫反応の一端を、世界で初めて解明しました。本研究成果が膵臓疾患の新たな治療法の開発や膵臓癌の予防法に応用されることが期待されます。
本件に関する論文が、平成30年(2018年)10月26日(金)AM1:00(日本時間)に、ライフサイエンス分野の中心的な雑誌“Cell”の発行元であるCell Pressが発行する米国科学雑誌“Trends in Immunology”にオンライン掲載されました。

【本件のポイント】
●今までほとんど理解されていなかった膵臓の慢性炎症の発症メカニズムを解明
●自己免疫性膵炎と慢性膵炎に共通する免疫異常を世界で初めて発見
●膵臓の慢性炎症性疾患の新たな治療法や膵臓癌の新たな予防法への応用に期待

【本件の概要】
膵臓の慢性炎症性疾患は、「自己免疫性膵炎」と「慢性膵炎」の2つに大別されます。
自己免疫性膵炎は、自己の膵臓組織を免疫システムが誤って攻撃して発症すると考えられています。その多くは、指定難病であるIgG4関連疾患(※1)が膵臓に生じたものと考えられており、膵癌をはじめとする各種の癌を併発することが多いことがわかっています。
慢性膵炎は、過度の飲酒により膵臓に炎症が持続し、進行に伴い膵臓の機能が失われ、下痢・腹痛・吸収不良・糖尿病などのさまざまな症状を伴う病気です。慢性膵炎の患者も膵臓癌が発症しやすいことがわかっています。この2つの疾患は発症メカニズムが解明されておらず、根治療法が存在していませんでした。
渡邉らの研究グループは、この2つの異なる病気の発症に、細胞が分泌するたんぱく質「サイトカイン」(※2)の2種が関わることを見出しました。一つは「I型IFN(インターフェロン)」(※3)、もう一つは「IL-33(インターロイキン33)」(※4)です。
自己免疫性膵炎と慢性膵炎の発症メカニズムの解明は、膵臓の慢性炎症性疾患の新たな治療法の確立に結びつくだけでなく、膵臓癌の予防法の開発につながる可能性があります。

【研究詳細】
雑誌名:“Trends in Immunology”ライフサイエンス分野の中心的な雑誌“Cell”の発行元であるCell Pressが発行する米国科学雑誌(インパクトファクター:14.188)
論文名:Mechanistic Insights into Autoimmune Pancreatitis and IgG4-Related Disease(自己免疫性膵炎とIgG4関連疾患の発症メカニズムに関する知見)
著 者:Tomohiro Watanabe(渡邉 智裕)、Kosuke Minaga(三長 孝輔)、Ken Kamata(鎌田 研)、Masatoshi Kudo(工藤 正俊)、Warren Strober

【研究詳細】
今回、渡邉らの研究グループは自己免疫性膵炎と慢性膵炎の発症メカニズムの解明に取り組み、これら2つの異なる病気に「I型IFN」と「IL-33」という2つのサイトカインが共通して関わることを発見しました。一方で「I型IFN」と「IL-33」を作る細胞はそれぞれ異なっており、自己免疫性膵炎では形質細胞様樹状細胞(※5)が「I型IFN」と「IL-33」を産み出し、慢性膵炎では膵臓腺房細胞(※6)が「I型IFN」と「IL-33」を産み出すことがわかりました。つまり、サイトカインの産生という点では自己免疫性膵炎と慢性膵炎は共通していますが、産生する細胞が異なるために、異なる病気として発症することが示唆されました。

【今後の期待】
本研究により、自己免疫性膵炎と慢性膵炎が「I型IFNとIL-33の過剰産生」という免疫異常を共有していることが、動物実験と患者さんの双方のレベルで明らかになりました。一方で、この2つの疾患は「I型IFNとIL-33を産生する細胞」が根本的に異なります。自己免疫性膵炎では形質細胞様樹状細胞が「I型IFNとIL-33」を産み出し、慢性膵炎では膵臓腺房細胞が「I型IFNとIL-33」を産み出して、病気を起こします。病気の発症メカニズムの解明という観点からは、「同じI型IFNとIL-33が過剰に存在しても、産生する細胞が異なるとなぜ異なる疾患になるのか?」という疑問の解決が望まれます。患者さんへの応用という観点からは、「I型IFNとIL-33の働きを阻害する薬剤」が、自己免疫性膵炎と慢性膵炎の双方に有効であると期待されます。

【論文について】
渡邉らの研究グループは、約10年前から自己免疫性膵炎と慢性膵炎の発症メカニズムの解明に取り組んできました。これまでに研究成果を段階的にいくつかの科学雑誌に発表しており、今回の論文は、研究成果の総説論文として“Trends in Immunology”に掲載されます。なお、論文は、米国国立衛生研究所・粘膜免疫研究室のWarren Strober博士との共同研究の成果です。

まず、研究グループはモデル動物を用いた研究によって、自己免疫性膵炎の発症に「形質細胞様樹状細胞が産生するI型IFNとIL-33」が必須であることを証明しました。形質細胞様樹状細胞を減少させる抗体やI型IFNとIL-33からのシグナルを阻害する抗体を投与することによって、自己免疫性膵炎の発症は予防できます。また、自己免疫性膵炎の患者さんの膵臓に「I型IFNとIL-33を産生する形質細胞様樹状細胞」が存在することを確認しました。これらの一連の成果は“Journal of Immunology 2015;195:3033-44”および“Journal of Immunology 2017;198:3886-96”に公表されました。
さらに、研究グループは自らが樹立した膵炎のモデル動物を用いて、慢性膵炎の発症に「膵臓腺房細胞が産生するI型IFNとIL-33」が必須であることを証明しました。このことは、I型IFNのシグナルが入らないマウスを使用した実験と、IL-33からのシグナルを阻害する抗体を用いた実験から証明されました。また、慢性膵炎の患者さんの膵臓に「IL-33を産生する膵臓腺房細胞」が存在することを確認しました。この一連の成果は“Immunity 2012;37:326-38”、“Mucosal Immunology 2016;9:1234-49”、“Mucosal Immunology 2017;10:283-298”に公表されました。
これらの研究から、渡邉ら研究グループは、形質細胞様樹状細胞がI型IFNとIL-33を産生すると自己免疫性膵炎の発症につながり、膵臓腺房細胞がI型IFNとIL-33を産生すると慢性膵炎の発症につながることを見出しました。

【用語解説】
※1 IgG4関連疾患…抗体の一つであるIgG4の増加を特色とする免疫疾患。膵臓、唾液腺、肺、腎臓などの様々な臓器に異時性・多発性に臓器障害を起こす。本邦から提唱された新たな疾患であり、大きな注目を集めている。

※2 サイトカイン…細胞が分泌するたんぱく質。免疫反応を決定づける因子の一つである。サイトカインの過剰分泌は免疫疾患を引き起こす。

※3 I型IFN…サイトカインの一つ。微生物感染、特にウイルス感染の場合に多く産生され、微生物感染の際の免疫防御に重要な役割を果たしている。その一方で、非感染時に多く産生されると、全身性エリテマトーデスに代表される免疫疾患を引き起こす。

※4 IL-33…サイトカインの一つ。炎症、アレルギー、組織の線維化に重要な役割を果たす。

※5 形質細胞様樹状細胞…免疫細胞の一つ。I型IFNを産生することに特化した樹状細胞。

※6 膵臓腺房細胞…消化管での消化、吸収に必要な消化酵素を作る膵臓の細胞。

【関連リンク】
医学部医学科 准教授 渡邉 智裕(ワタナベ トモヒロ)
http://www.kindai.ac.jp/meikan/1505-watanabe-tomohiro.html

関連URL:https://www.kindai.ac.jp/medicine/


  • 形質細胞様樹状細胞と膵臓腺房細胞が産生するI型IFNとIL-33と膵炎の関係 形質細胞様樹状細胞と膵臓腺房細胞が産生するI型IFNとIL-33と膵炎の関係



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