株式会社仙台放送


東北大学加齢医学研究所が実証結果を発表
「6週間の認知トレーニングで高齢者の自動車運転技能と認知力と活力が向上!」(運転技能向上トレーニング・アプリの開発とその効果を検証)
<5月30日開催 プレスセミナーのご案内>



【図1】

【図1】

【発表のポイント】
1:実施しやすい自宅のTVでできる運転技能向上トレーニング・アプリを新開発した。
2:6週間という短期間で高齢者の自動車運転技能が向上することを実証した。

【概要】
東北大学加齢医学研究所の野内類(のうちるい)准教授と川島隆太教授を中心とする研究グループは、自宅のTVで実施できる運転技能向上トレーニング・アプリを開発し、高齢者を対象に無作為比較対照試験を用いて効果検証を行いました。その結果、1日20分の運転技能向上トレーニング・アプリを6週間実施したグループは、同じ期間他のゲームアプリを実施したグループよりも、自動車運転技能と認知力(処理速度と抑制能力)とポジティブ気分(活力)が向上することが明らかになりました。
 この研究の成果は、2019年5月7日発行のオンライン雑誌のFrontiers in Aging Neuroscience誌(Impact Factor = 3.582)に掲載されました。なお本研究は東北大学と株式会社仙台放送の産学連携の共同研究の成果の一部です。

■実証研究に関するお問い合わせ先
東北大学加齢医学研究所 野内類 TEL:022-717-8952

【プレスセミナーのご案内】
今回の研究結果について、報道関係の方々を対象にプレスセミナー(無料)を開催いたします。ご出席には事前のお申込みが必要です。
題名:高齢ドライバーの運転技能向上:トレーニング・アプリによる実証
日時:2019年5月30日(木)10:30~11:30(受付10:15~)
場所:東北大学東京分室 (東京駅日本橋口直結・サピアタワービル 10F)
内容:東北大学加齢医学研究所所長・川島隆太教授、野内類准教授による解説ならびに質疑応答、トレーニング・アプリの体験等
主催:東北大学加齢医学研究所
共催:株式会社仙台放送

なおプレスセミナーにご参加を希望されるメディア各社は、5月24日までに下記宛に必要事項を記入し、メールでお申込み下さい。(e-mail:drive@ox-tv.co.jp)
1:貴社名、2:媒体名、3:部署名、4:ご芳名、5:電話番号&FAX番号、6:携帯番号、7:email、8:カメラ撮影の有無、9:ご同行者名&人数、10:個別取材の希望の有無

■プレスセミナーに関するお問い合わせ先
株式会社仙台放送 広報部 柳沢、林 TEL:022-267-1268
株式会社仙台放送 企画制作部 太田 TEL:022-267-1297
e-mail:drive@ox-tv.co.jp


1)研究の背景
 私たちの情報を判断したり、覚えたりするこころの働きである認知機能(記憶力や処理速度や抑制能力など)は、加齢と共に低下していくことが知られています。この加齢と共に低下する認知機能は、高齢者の日常生活を困難にする要因の一つです(買い物や車の運転など)。そのため、この低下する認知機能を維持・向上させるトレーニングの開発に多くの関心が寄せられています。
これまで、私たちの研究チームは、脳トレゲームや音読・計算トレーニングや処理速度ゲームやサーキット運動トレーニングを実施すると高齢者の認知機能が向上することを明らかにしてきました(注1)。
 本研究では、新たに自宅のTVで実施できる運転技能の向上を目指したトレーニング・アプリを開発し(注2)、無作為比較対照試験を用いて効果の検証をしました。無作為比較対照試験は、医療分野で用いられる根拠の質(エヴィデンスレベル)の高い研究手法です。

2)研究の方法
仙台市、塩竃市、栗原市で募集した、精神疾患、脳疾患、高血圧の既往歴のない健康な高齢者60人をa) 運転技能向上トレーニング・アプリを実施する「運転技能向上アプリ群」とb)その他のゲームを実施する「対照アプリ群」に分け、無作為比較対照試験を実施しました。
運転技能向上トレーニング・アプリのゲームは、できるだけ早く回答することが要求され、さらに、参加者の成績によってゲームの難易度が変化します。一方で、対照アプリ群のゲームは、早く回答する必要はなく、介入期間を通じて難易度は変化しません。対照アプリ群のゲームは、参加者が早く回答しても一定の時間が経過するまで、次のゲームは先に進まない設定となっています。各群のゲームの例は、図1(運転技能向上アプリ群)と図2(対照群のゲーム)に示しました。
両群ともに6週間(週5回以上1日20分)の自宅のTVに接続したセットトップボックスを用いて、ゲーム介入を行いました。トレーニング介入前後に自動車教習所のコース上での自動車運転技能検査(注3)や認知機能検査(注3)や感情状態などを聞く心理アンケートを実施し、ゲーム介入による変化を計測しました。研究方法の概要は、図3に示しました。

運転技能向上トレーニング・アプリの実施状況と運転技能向上トレーニング・アプリのゲームの例(図1参照)
A)自宅のTVにセットトップとwifiルーターを接続し、テレビのリモコンでゲームを実施します。

B)素早く状況を判断するゲームです。標識に書かれた数字を見て、数の大きい数字をできるだけ早く選択するゲーム。数字だけでなく、数式(4+6など)がでることもあります。

C)2つの事柄に注意し続けるゲームです。中央下の白い円の上を音符マークが周っているので、円上部の中央にあるマークに隠れた瞬間にボタンを押す。さらに、道路から人か物(ゴミ箱など)がでてくるので、人の場合には出てきたらボタンを押す(物の場合はボタンを押さない)。

D)移動する物体の動きを予測するゲームです。左から移動してくる車両や人などがブロック塀から出てくる直前にボタンを押す。

対照アプリ群のゲームの例(図2参照)
A)B)数の大きい数字を選択するゲーム。

B)5つの数字の中で大きい数値を順に選んでいくゲーム。

C)画面左にあるじゃんけんの手に負ける手を選ぶゲーム。

研究の方法の概要(図3参照)

3)研究の結果
 運転技能検査と認知機能検査と心理アンケートの変化量(介入後の得点から介入前の得点を引いて算出)を用いて、運転技能向上アプリ群と対照群のゲームアプリの効果を調べました(注4)。解析の結果、運転技能向上アプリ群の方が対照アプリ群よりも、自動車運転技能、認知力(処理速度(検査名:符号、記号)と抑制能力(検査名:ストループ))、活力気分(検査名:活気-活力尺度(検査名:POMS-II))が向上することが明らかになりました(図4参照)。

運転技能向上アプリ群と対照アプリ群の介入による変化量(図4参照)
補足:変化量は、介入後の得点から介入前の得点を引いて算出しました。変化量は、得点が高いほど良いことを示します。エラーバーは、標準誤差です。

4)研究成果の意義
今回の成果より、運転技能向上トレーニング・アプリを実施すると、6週間という短い期間であっても高齢者の運転技能や認知機能(処理速度と抑制能力)や活力気分が向上することが初めて明らかになりました。自宅のTVで実施できる認知トレーニングは高齢者であっても取り組みやすいことから、a)今後の高齢者の運転技能の維持・向上ためのツールやb)高齢者の交通事故などの減少を目指した取り組みとしての応用が期待されます。

 この研究は、東北大学加齢医学研究所の野内類准教授と川島隆太教授を中心とする研究グループにより実施しました。この研究は、(株)仙台放送との産学連携の共同研究の成果の一部です。本研究における企業等との利害関係については、東北大学利益相反マネジメント委員会の審査と承認を得ています。また、この研究は、日本学術振興会科学研究費補助金(若手研究(A):15H05366、基盤研究(特設)B:16KT0002、新学術領域研究: 17H06046)と文部科学省卓越研究員事業のサポートを受けて実施いたしました。
本研究の成果は、2019年5月7日にオンライン雑誌のFrontiers in Aging Neuroscience誌(Impact Factor = 3.582)に掲載されました。

【注の説明】
注1) これまでの研究チームの高齢者の認知機能の改善に関する成果
1:脳トレゲームを4週間実施すると高齢者の実行機能と処理速度が向上することを実証
Nouchi, R., et al. (2012) Brain Training Game Improves Executive Functions and Processing Speed in the Elderly: A Randomized Controlled Trial. PLoS ONE 7(1): e29676. doi:10.1371/journal.pone.0029676
論文全文(オープンアクセス)
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0029676

2:サーキット運動を4週間実施すると高齢者の記憶能力などが向上することを実証
Nouchi, R. et al. (2014). Four weeks of combination exercise training improved executive functions, episodic memory, and processing speed in healthy elderly people: evidence from a randomized controlled trial. Age (Dordr). 36(2): 787–799. doi: 10.1007/s11357-013-9588-x
論文全文
http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs11357-013-9588-x
プレスリリース(東北大学)
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2013/10/press20131023-01.html

3:音読・計算介入を5ヶ月間実施すると高齢者の実行機能が向上することを実証
Nouchi, R., et al. (2016) Reading Aloud and Solving Simple Arithmetic Calculation Intervention (Learning Therapy) Improves Inhibition, Verbal Episodic Memory, Focus Attention and Processing Speed in Healthy Elderly People: Evidence from a Randomized Controlled Trial. Frontiers in Human Neuroscice. 10:217. doi: 10.3389/fnhum.2016.00217
論文全文(オープンアクセス)
http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fnhum.2016.00217/full

4:処理速度ゲームを4週間実施すると高齢者の認知力と抑うつ気分が改善
Nouchi, R., Saito, T., Nouchi, H., & Kawashima, R. (2016). Small acute benefits of 4 weeks processing speed training games on processing speed and inhibition performance and depressive mood in the healthy elderly people: Evidence from a randomized control trial. Frontiers in Aging Neuroscience. 8:302. doi: 10.3389/fnagi.2016.00302
論文全文(オープンアクセス)
http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fnagi.2016.00302/full
プレスリリース(東北大学)
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20170113_03web.pdf

注2) 運転技能向上トレーニング・アプリ(特許6284171号)
国立大学法人東北大学加齢医学研究所と株式会社仙台放送が産学連携により共同開発した「トレーニング・アプリ」で、川島隆太教授による脳科学研究の成果と仙台放送が開発・放送している脳のトレーニング番組『川島隆太教授のテレビいきいき脳体操』の知見から開発されました。テレビやタブレット等の端末を利用した「作業速度訓練による安全運転能力向上プログラム」で、実際の運転行為や疑似運転行為(シミュレータ等)を伴わない日常的な認知トレーニングにより、運転技能の維持・向上を目指すものです。
公式URL:http://www.ox-tv.co.jp/brain/tv-training/

注3) 使用した自動車運転技能検査と認知機能検査の例
自動車運転技能検査
・指導員が同乗の上で自動車学校内のコース(約1.7km)を自動車で数週走り、右折・左折や進路変更の様子を観察し、安全確認をしているかや安全速度を守っているかを評価しました。評価項目は図5の通りです。この方法は、先行研究(Nozawa et al., 2015)と同様の方法を用いました。

Nozawa, T. et al., “Effects of Different Types of Cognitive Training on Cognitive Function, Brain Structure, and Driving Safety in Senior Daily Drivers: A Pilot Study,” Behavioural Neurology, vol. 2015, Article ID 525901, 18 pages, 2015. https://doi.org/10.1155/2015/525901

認知機能検査の例
・ストループ検査(抑制能力を計測)(図6参照)
・符号検査(処理速度を計測)(図7参照)

注4) 解析方法の詳細な説明
各検査の変化量(介入後から介入前の得点を引いて算出)を算出し、介入前の得点とMMSE (Mini Mental State Examination-Japanese:全般的な認知機能の計測)と年齢と性別を共変量としたpermutation-ANCOVA(analysis of covariance:共分散分析)を実施しました。また、多重代入法を用いて、欠損値を補完し、最終的にFDR(false discovery rate)を用いてP値の補正を行いました。
解析は、統計ソフトのRのパッケージの、lmPermとmiceとmiceaddsのパッケージを用いて実施しました。

【詳細な説明】
掲載論文の情報
Nouchi, R., Kobayashi, A., Nouchi, H., & Kawashima, R. (2019). Newly developed TV-based cognitive training games improve car driving skills, cognitive functions, and mood in healthy older adults: Evidence from a randomized controlled trial. Frontiers in Aging Neuroscience. 11:99. doi: 10.3389/fnagi.2019.00099

下記より論文の全文のダウンロードができます。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnagi.2019.00099/full

■関連情報:
東北大学加齢医学研究所 http://www.idac.tohoku.ac.jp/site_ja/
仙台放送プレスリリース http://www.ox-tv.co.jp/company/press-release/

関連URL:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnagi.2019.00099/full


  • 【図1】 【図1】
  • 【図2】 【図2】
  • 【図3】 【図3】
  • 【図4】 【図4】
  • 【図5】 【図5】



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