ベック株式会社


田邉康雄のリスクマネジメントリポートNo.4 ISO31000(リスクマネジメント国際規格)
ISO31000の活用法(3)―― 形骸化が問われるISOマネジメントシステム内部監査の二の轍を踏まない自己宣言



リスクマネジメント協会正会員の田邉康雄先生に執筆いただいているリスクマネジメントリポートの第4弾です。シリーズは1ヶ月に1回程度掲載させていただいておりますが、企業のCROの方々から多くのご意見をいただいており、たいへんご好評いただいております。1SO31000の活用法についての内容となっております。文末にこれまでの掲載リリースURLを添付しておりますので、お読みでない方は是非そちらもご参考くださいませ。

リスクマネジメント協会正会員(PRM)田邉康雄
英国IRCA契約OHSAS18001審査員養成トレーニングコース認定審査員
英国IRCA登録ISO9001/14001/OHSAS18001 Lead Auditor
米国/オーストラリア/ニュージランドRABQSA登録OHSAS18001 Lead Auditor
APECエンジニア、技術士(化)、中小企業診断士、労働安全コンサルタント、環境カウンセラー(事業)、通訳案内士
http://www.tanabe-consul.jp


★☆★「内部告発は内部監査だ」
と、妙なことを言うようだが、内部監査の役目を果たしているのだ。実例を示そう――。

―― A薬品工場では、ある薬品を法に基づく許可をもらって製造していた。そこへTPM活動において使用する助剤の変更が提案された。
助剤Xから助剤Yへの変更だ。Xは人体無害だが、Yは有害だ。しかし検討の結果、助剤は最終製品にまったく混入しないことが判明し、X⇒Yの変更を行った。
 一方許可をもらった際、製造法を届け出ていた。これを変更するに当たっては改めて許可が必要だった。このことをTPM活動ではすっかり忘れていた。なぜならTPM活動においては、コストダウンが主たる目標になるからである。何事も無く日が過ぎた。しかし――。

ある日事件が発生した。
退職した元社員が当局へ告訴したのだ。そして当局の査察が入った。その結果法律違反を指摘されて数ヶ月間の全工場操業停止をくらった。該当する製造部門だけでなくて全工場だ。これによってこの工場の経営は危機に瀕した。ところで――、

―― TPMとは何だろう。
まず歴史を遡ろう。品質管理のQC(クオリティコントロール)が、QC7つ道具と共に我が国に導入され、それがボトムアップの社風と相俟って「全員参加」のQCを生んだ。これに「トータル」をつけてTQCという。具体的には、製造現場における「小集団活動」として実行された。
「7つ道具」の中でもとくに「特性要因図」が好んで利用された。俗に「魚の骨」と呼ばれる。大勢の従業員で仲良く「わいわい」言いながら、発生する物事の因果関係を議論するには最適のツールだ。

その後TPMが導入された。当初はTotal Preventive Maintenance(総合予防保全) を意味していた様だが、いつの間にか Total Productive Management (総合生産保全⇒全員参加の生産保全)に代わった。
多くの企業において、人事部・勤労部主導により集団活動をこのTPMへと発展させた。「仲良く、わいわい」を更に発展させた活動と言える。しかし――、

―― 落とし穴
が有った。
TPMは全員参加なので、その決定事項はオーソライズされたものとなる。ここに落とし穴があったのだ。その理由を示そう。
何事でも言えることだが、全員で一方方向の活動をしていると、いわゆる「押せ押せ、どんどん」の勢いとなる。善悪は別にしてコンセンサスが醸成される。そして成果を急ぐ。まるで御神輿(おみこし)だ。
この御神輿の行く手に大きな落とし穴がある。担ぎ手は落とし穴には気がつかないから、落ちて初めて「落とし穴」だったことに気がつく。
しかしもう遅い。穴の底でもがくだけである。先に挙げた例でいうと、「みんなでやった」成果が「違法だった」と気づかずに落とし穴に落ちて初めて違法に気づいたようなものである。

―― 落とし穴に落ちても「みんなで仲良く」やっているうちはよい。落とし穴の底で「仲良く」やればよいのだから。しかし昨今の景況下では仲良くできない。
戦後日本に形成された美しい雇用慣行が音を立てて崩壊してしまった。極端にいうと「馘首」(かくしゅ=解雇や免職の意味)が公然と行われるのだ。追い討ちをかけるように高齢化だ。
不満をもった定年退職専門家が、時間をもてあまして在職中のTPMを思いだす。「待てよ。違法だったな。これは当局へ告訴しない訳にはいかない」と。鬱憤(うっぷん)晴らしのいい材料になってしまった。

―― 人の善は信じる。しかし善なる人の行いは、これを信じない。
これが西欧社会の考え方だと言われる。この考え方の基盤に立って内部監査が発達した。ISOマネジメントシステム(ISOMS)よりも以前からあった。
一方わが国においては「善なる人の行いを疑っては、その善なる人の人格を疑うことになる」と考える。だから人格を疑うことを避けて内部監査は発達してこなかった。
ここへ内部監査がISOMSと共に導入されたのだから当然戸惑う。見よう見まね、あるいは教わるままに実施した。現在でもISOMS審査員研修機関が実施する内部監査員研修コースは繁盛している。
コースで教えている内容は、部分々々において正しいのだが、これを持ち帰った内部監査員は教わった通りの型に嵌った内部監査を実施する。そして認証/登録のための審査員を迎える。即ち登録継続のための内部監査になってしまった。その結果、ISOMS 内部監査が形骸化してしまった。

―― ISO31000は「現段階では」という前提つきではあるが「認証/登録のために利用されることは意図していない」と明記されている。だから認証/登録をしてはならない。
敢えて認証/登録をすれば、弊害が生じかねない。弊害の中でも大きい害は、前述した内部監査の形骸化である。ISOMSと同様に内部監査が形骸化してしまう。

しかしISO31000適合を自己宣言すれば、これは自らの意思と責任で行うものであるから、「内部監査の形骸化」は起りえない。だからISO31000は、自己宣言によってこそ活用できるのだ。
自己宣言は英語で複合語「self-declaration」である。ISO14001の中ではファイフォンをとって「selfdeclaration」と一語になっている。ISO31000リスクマネジメント国際規格への適合を、自社の責任で外部に向かって宣言することは何と有意義なことだろうか。

次回は、「自己宣言により形骸化しない内部監査を」をリポートする。

なお、このリポートのNo.1、No.2、並びにNo.3も御覧になることを推奨する。
No.1 http://www.news2u.net/releases/69324
No.2 http://m.news2u.net/releases/70578
No.3 http://www.news2u.net/releases/71997

(完)

リスクマネジメント協会正会員(PRM)田邉康雄
英国IRCA契約OHSAS18001審査員養成トレーニングコース認定審査員
英国IRCA登録ISO9001/14001/OHSAS18001 Lead Auditor
米国/オーストラリア/ニュージランドRABQSA登録OHSAS18001 Lead Auditor
APECエンジニア、技術士(化)、中小企業診断士、労働安全コンサルタント、環境カウンセラー(事業)、通訳案内士
有限会社田辺コンサルタント・グループ社長
会社事業:技術者研修、生涯現役エンジニア塾、リスクマネジメントコンサルティング、安全コンサルティング、ISOコンサルティング、ISO割引損害保険の販売
URL: http://www.tanabe-consul.jp(トップ頁)
http://www.tanabe-consul.jp/company/img/hoken.pdf(損害保険代理店の頁)


リスクマネジメント協会認定研修機関
ビジネスエデュケーションセンター株式会社
本社:東京都新宿区西新宿1-4-11

関連URL:http://www.becer.jp/lesson/index.html

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